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被害者に同調する相談

 

   相談を受けた側の「相談ノウハウ」について、さらに記述していこう。

   最近、「ブラック企業」という言い方が広く流布されている。労働条件が悪く、過酷な労働を強いる企業のことを意味する用語である。ときには労働基準法さえ守らないような、法律すれすれの労働条件を強いる企業を指す。そういう「ブラック企業」は、経営環境が悪化し、効率化による費用削減に走る日本企業において増えている。そして、問題視されている。高校生や大学生などの学生が就職する際、「ブラック企業」を避けたいという要望が強まっている。また、「ブラック企業」に就職した生徒や学生が、そのことを理由にすぐに辞めてしまうことも問題となっている。

   多くの日本人が、その「ブラック企業」の労働条件の改善を主張しているのも事実である。しかしその一方で、「ブラック企業と言って、そこから逃げる風潮は良くない。そのくらいのことは会社だから当然、ある。それでも働き続ける気概が必要だ。気概がないのが問題だ。我慢強くなければならない」と、企業側に同調的な意見が多く見られるのである。家族や企業関係者の多くが、企業経営のひどさを指摘しないで、企業側に同調的な意見を表明しているのである。

   このような主張に対峙して、私の意見はそれらとは異なる。前節の意見は、「ブラック企業」で働く人々の気持ちを理解しているとは言えない。企業に問題があることは普通に考える以上に多いのであり、批判されるべきは企業の側であることも多い。そのため「ブラック企業」のような企業に同調する立場を採るべきではないのである。逆に、「ブラック企業」で働く人々の側に立って、彼らの職場で置かれている境遇に同調すべきなのである。

   本題に戻ろう。パワハラを受けた被害者が、その窮状を外部の友人やパワハラと関係していない同僚や上司に相談したとしよう。そのとき、その相談を受けた多くの関係者が、当の被害者ではなく、被害を及ぼしている加害者の側に同調した意見を表明するのではないだろうか。それは、「ブラック企業」に直面して、その劣悪な労働条件について相談した場合と同じになると思うのだ。「パワハラだと言って、そこから逃げる風潮は良くない。それでも働き続ける気概が必要だ。気概がないのが問題だ。我慢強くなければならない」。さらには、「おかしいのはあなたのほうだ」「会社なのだからそのくらいのことはある」「あまいんじゃないの」「あなたのほうが反省しなくてはいけない」という言辞が返ってくるのではないかとさえ思う。

   私のいくらかの経験から言って、パワハラを受けた被害者が相談した場合、半分の人はそういう対応をするのではないかと思う。そこまでひどくなくても、けんか両成敗ではないが、被害者と加害者との中間、中立的なアドバイスになってしまうのではないか。そして被害者は、こうした言辞でアドバイスされるのを不安に思い、相談することを躊躇してしまうこともあると思うのである。

  相談を受けた人の、そうした相談対応は、「相談ノウハウ」として採用すべきではない。これでは正しい「相談ノウハウ」とは言えない。前項で記述したように、被害者の側に立って、「傾聴」することが大切であり、「寄り添う」ことが必要であると、私には思える。被害者として相談する人の身になって、その人がいまどのような境遇に置かれているのかに注目すべきなのだ。被害者の相談内容を理解したうえでの、被害者に同調した相談・アドバイスが必要なのである。

 正しい「相談ノウハウ」が欠如していることが、パワハラの被害者の相談しづらい要因になっている。そして私の言う、正しい「相談ノウハウ」の確立が待たれるのであり、それが人々の常識として、広がることが期待されるのである。

at 16:53, 砂田好正, パワハラが横行する職場

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