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元プロ野球選手・桑田真澄氏の見解

朝日新聞2013112日(土)朝刊社会面(39面)
【見出し】
中学まで毎日練習で殴られた
体罰に愛を感じたことはない
元巨人・桑田さん「自立妨げる」
【前文】
 体罰問題について、元プロ野球投手の桑田真澄さん(44)が朝日新聞の取材に応じ、「体罰は不要」と訴えた。殴られた経験を踏まえ、「子どもの自立を妨げ、成長の芽を摘みかねない」と指摘した。
【桑田真澄さんの経歴】
大阪府出身。PL学園高校時代に甲子園で計20勝を記録。プロ野球・巨人では通算173勝。米大リーグに移り、2008年に現役を引退した。09年4月から1年間、早稲田大大学院スポーツ科学研究科で学ぶ。現在はスポーツ報知評論家。今月、東京大野球部の特別コーチにも就任。著書に「野球を学問する」(共著)など。
【本文】
 私は中学まで毎日のように練習で殴られていました。小学3年で6年のチームに入り、中学では1年でエースだったので、上級生のやっかみもあったと思います。今でも思い出したくない記憶です。
 早大大学院にいた2009年、論文執筆のため、プロ野球選手と東京六大学の野球部員の計約550人にアンケートをしました。
 体罰について尋ねると、「指導者から受けた」は中学で45%、高校で46%。「先輩から受けた」は中学36%、高校51%でした。「意外に少ないな」と思いました。ところが、アンケートでは「体罰は必要」「ときとして必要」との回答が83%にのぼりました。「あの指導のおかげで成功した」との思いからかもしれません。でも肯定派の人に聞きたいのです。指導者や先輩の暴力で、失明したり大けがをしたりして選手生命を失うかもしれない。それでもいいのか、と。
 私は、体罰は必要ないと考えています。「絶対に仕返しをされない」という上下関係の構図で起きるのが体罰です。監督が采配ミスをして選手に殴られますか? スポーツで最も恥ずべきひきょうな行為です。殴られるのが嫌で、野球を辞めた仲間を何人も見ました。スポーツ界にとって大きな損失です。
 指導者が怠けている証拠でもあります。暴力で脅して子どもを思い通りに動かそうとするのは、最も安易な方法。昔はそれが正しいと思われていました。でも、例えば、野球で三振した子を殴って叱ると、次の打席はどうすると思いますか? 何とかしてバットにボールを当てようと、スイングが縮こまります。「タイミングが合ってないよ。他の選手のプレーを見て勉強してごらん」。そんなきっかけを与えてやるのが、指導です。
 今はコミュニケーションを大事にした新たな指導法が、多くの本で紹介されています。子どもが10人いれば10通りの指導法があっていい。「この子にはどういう声かけをしたら、伸びるか」。そう考えた教え方が技術を伸ばせるんです。
 「練習中に水を飲むとバテる」と信じられていたので、私はPL学園時代、先輩たちに隠れて便器の水を飲み、渇きをしのいだことがあります。手洗い所の蛇口は針金で縛られていましたから。でも今、適度な水分補給は常識です。スポーツ医学も、道具も、戦術も進化し、指導者だけが立ち遅れていると感じます。
 体罰を受けた子は、「何をしたら殴られないで済むだろう」という思考に陥ります。それでは子どもの自立心が育たず、自分でプレーの判断ができません。
殴ってうまくなるなら誰でもがプロ選手になれます。体罰を受けなかった高校時代に一番成長しました。「愛情の表れなら殴ってもよい」と言う人もいます。私自身は体罰に愛を感じたことは一度もありません。
アマチュアスポーツにおいて、「服従」で師弟が結びつく時代は終わりました。今回の残念な問題が、日本のスポーツ界が変わる契機になってほしいと思います。(聞き手・岡崎一郎)
 
 

at 13:28, 砂田好正, パワハラが横行する職場

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